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【143号】自家焙煎珈琲《1》 喫茶店と珈琲屋

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◆喫茶店と珈琲屋の違い◆

 日本には「喫茶店」の数が多い。厳密な定義をすれば「レストラン」と「喫茶店」と「珈琲屋」は違う範疇の飲食店営業なのだが、世間ではそれらは混在している。ぼくは名古屋で生まれ育ったからよその地方へ行くと「喫茶店」の数が少ない印象をもつが、そんな地方でも実際は「レストラン」の看板を掲げていても食事の時間以外は「喫茶店」として営業している。だから数ある喫茶店の営業の競争は激しい。
 そんななかで、意識的に“おいしいコーヒー”を目指す場合に「珈琲屋」と名乗る場合が多いようだ。
 よそのお店より“おいしいコーヒー”を提供するための鉄則は、よく言われるように「三たて」を守ることが必須だろう。「煎りたて」「挽きたて」「淹れたて」、この三つが「三たて」だとされる。この三つのうち、後者のふたつはそのお店の意欲だけで実現するが、「煎りたて」は珈琲豆の供給を焙煎業者に委ねていてはなかなか実現しない。ただ、絶対に不可能だとはいえないが…
 そこで、喫茶店に焙煎機を備えて稼働させ、「煎りたて」を実現しようとする意欲的な喫茶店の経営者が生み出した手法が「自家焙煎珈琲」だと思う。

 1960年代に「珈琲専門店ブーム」があった。そのころにたくさんの「珈琲専門店」と名乗る自家焙煎の喫茶店が誕生したらしい。が、ぼくはまだ生まれていなかったから詳しいことは知らないウソだよん♪
 また、いわゆる1990年代のバブル以降には日本にも「カフェブーム」が起こり、日本独自の「シアトル系カフェ」や「自家焙煎珈琲店」、「ギャラリーカフェ」などが誕生した。90年代後半に米国で発祥した「スペシャルティコーヒー」指向も日本の珈琲屋さんに取り込まれてきた。
 今の日本には、珈琲屋さんの世界にも「新しい波」が成熟しつつある。この話題は次回にでも…

 その他方では、在来型の「珈琲専門店」の衰退も激しい。開店した当初の“おいしい珈琲”への意欲は煩瑣(はんさ)な日常の業務の中で次第に失われてゆき、利益率よりも売り上げを優先しているうちにだんだん「食事」や「デザート」のメニューが増え、そのうち単なる世間並みの「喫茶店」になる。もうその時点でこの喫茶店の主は焙煎機を回す意欲を喪失してしまう場合が多い。
 また、焙煎した珈琲豆を焙煎業者から仕入れるより生豆を買って焙煎した方が原価率がよいからという理由で自家焙煎をしているだけで、「挽きたて」「淹れたて」を忘れてしまう経営者もいらっしゃる。
 そういうぼくも、たまに「自家焙煎珈琲」の看板に惹かれて入った珈琲屋さんで、完全に冷めた珈琲をポットからミルクパンで温め直し、ひどく濁った珈琲を飲む羽目に遭うことがある。そんな喫茶店にかぎって、食事のメニューなどは豊富で、お店も結構賑わっている場合が多い。この喫茶店の主は開業以後さまざまな試行錯誤を繰り返して現在の繁栄を築き揚げたのだ。その経営方針は正しかったのだろう。
 だが、こんなお店はいまやフツーの「喫茶店」であり、「珈琲屋」ではないから、店の前の「自家焙煎珈琲」という看板だけは書き換えてもらいたい、と思う。

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