【144号】自家焙煎珈琲《2》 ヌーベルバーグ
◆ヌーベルバーグ◆
1990年代の後半から、日本にも新しい流れの「珈琲屋さん」が登場した。珈琲だけ、あるいは珈琲と紅茶に特化したメニューを掲げて、落ち着いた雰囲気の中で静かに時を過ごすことのできるような空間を提供するいわば新しい波が誕生した。
ぼくは、こういう珈琲屋さんを仏国の映画の歴史に例えて「ヌーベルバーグ“la Nouvelle vague”」と呼ぶにふさわしいと考えている。珈琲を飲む時間を「おいしい珈琲」にふさわしい雰囲気の中ですごすという発想は従来の「珈琲専門店」には大きく欠けていた。お店の外装はもちろん、落ち着いた内装や壁などの装飾にも工夫を施し、また調度品にも気を配り、おいしい珈琲にふさわしい「器」の選定をする珈琲屋さんが登場した。
そんな珈琲屋さんではフードメニューを絞り込んでいるのが特徴的で、また営業時間も無駄に長くしない場合が多い。また、ご店主の目の届く範囲の営業時間とお店の広さとを守っていて、来店する客には常に「おいしい珈琲」を提供するという努力を惜しまない姿勢が感じられる。
そんな珈琲屋さんのなかにはもちろんだが、いわば当然に「自家焙煎」をするお店が多い。前回の記事で記述したとおりで、そんな珈琲屋さんのご店主は「挽きたて」「淹れたて」だけでは満足できないからだろう。お店のどこかに焙煎機を備えていて、常に独自のブレンドのあるいは単品種の「煎りたて」の珈琲を、しかも客の注文ごとに抽出してくださる。だからこういう珈琲屋さんの珈琲なら安心しておいしくいただける。また世の中の一般的な「喫茶店」と珈琲一杯の価格はほとんど変わらない場合が多い。
なぜぼくがこのあたらしい波の珈琲屋さんを「ヌーベルバーグ」と仏語で表現したかというと、じつは同じ時期に米国では「ニューウェーブ“the new wave”」と呼ぶにふさわしい新しい波が生まれているからだ。この件については次回に愚見をお話しさせていただくつもりでいる。
ところが、個人的な事情で来週は「休刊」する恐れが多い。





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