【148号】自家焙煎珈琲《6》 きしめん
珈琲屋さんと麺類の「きしめん」にはまったく関係などないと思われるかもしれないけれど、じつは微妙な共通点がある。名古屋の街には喫茶店が多いことはもちろんだが、うどん屋さんや蕎麦屋さんだってたくさんある。お昼には喫茶店でランチを食べる習慣のひとも多いけれど、ぼくを含めて麺類の愛好家も多い。
名古屋のうどん屋さんの多くでは「うどん」はゆで麺を用意している。が、「お蕎麦」や「きしめん」に限っては客の注文に応じてから茹でるお店が少なくない。これは珈琲屋さんの場合における「個別抽出」に相当する。それだけ蕎麦やきしめんは茹でたあとの味の劣化が激しいことを意味する。
またきしめん屋さん、うどん屋さんには「手打ち」を謳うお店も多い。これは珈琲屋さんにおける「自家焙煎」に相当すると考えても差し支えない。そのお店には製麺所から仕入れた麺の味に満足できない職人さんがいて自分で麺を打つわけだから、少なくとも市販の製麺所の麺よりは優れた味を目指している場合が多いからだ。
とはいえ麺類の場合には「出汁」や「てんぷら」などの「かやく」の修行も要る訳で、「手打ち」だからおいしいとは限らないから、修行は珈琲屋さんよりある意味では厳しいかもしれない。
逆にうどんやきしめん、蕎麦の場合には一定の味覚をさえ満足する品を提供すれば、客は少なくとも満腹感だけは味わえるのに対して、珈琲では満腹感は伴わない。そういう意味で珈琲屋さんでは「おいしくない珈琲」だけを提供していては、特別な工夫をしない限り客足はおそらく間違いなく間もなく減るに違いない。だから珈琲屋さんの場合にも修行なくして経営は成り立たないはずだ。
ちなみに、名古屋の街には「手打ちきしめん」の看板を掲げるお店はたくさんあるが、ほんとうに美味しいと思うに足りる本物の「手打ちきしめん」を喰わせるお店は必ずしも多くない。
「自家製麺」の看板を掲げる麺類屋さんのチェーン店もあるが、セントラルキッチンで製麺してライトバンで運ぶようなフランチャイズチェーンの麺類屋さんに足を踏み入れる輩の心理を、すくなくともぼくは理解できない。





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