【159号】家庭でも珈琲を《2》
はじめて買ったカリタ
生意気盛りの高校生のころ学校からの帰り道に大久手で市電を降りて、珈琲豆屋さんに入った。
そこで生まれてはじめて自分で珈琲を淹れてみようと思い立ってカリタと挽いた珈琲豆を買った。これはそのカリタの現存する実物だ。
それまで一般的に喫茶店ではネルドリップを使うことは知っていたが、当時(1970年ころ)名古屋の街には珈琲専門店がいわばブームとなっていて、多くの珈琲専門店ではサイフォンを用いていた。とはいえ、その器具は高価だしガラス製だから扱いにも気を遣う。
またサイフォンにはネルのフィルターを必要としていて、そのネルの維持管理も大変だ。乾かせてはいけないというし、付着する油脂を酸化させぬよう冷蔵庫で厳重に管理して、しかも毎日使えという。もちろん数人分ずつ淹れるネルドリップの存在も知っていたが、こちらも同様で維持管理する自信がない。
ペーパードリップなら紙は使い捨てだから保守の必要はない。それに所詮高校生の買うような安い珈琲豆なら、どの抽出方法でも珈琲の味にさほどの差は出まいとも思った。だからこのカリタがぼくの珈琲の原点でもある。
とはいえ、恰好をつけて陶器製の製品を選択したのは失敗だった。コーヒーカップを熱湯で暖めることは簡単だけれど、この陶器のドリッパーを暖めることは大変な仕事だ。
喫茶店ならカップと同時に湯煎しておくだけだが、家庭で一杯の珈琲のために湯煎の器具を用意することは容易ではない…
という訳で、すぐにこのカリタは樹脂製のものと選手交代して「お蔵入り」となった。
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