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【195号】営業社員に向いた喫茶店

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 ぼくは東京の学校を辛うじて卒業して、ある楽器屋に職を得た。主たる仕事の内容は小中学校での楽器の営業だった。売る商品は教材楽器と備品楽器で、主に学校の先生か事務員さんから注文をいただく。
 事務員さんからの注文は予算の通った年度の初めがほとんどで、あとは例外的になる。教材楽器はその教材を使い始める学年の主任の先生との商談で、楽器の販売価格と納入方法が折り合えば商談は成立した。
 当時、小学一年生は「鍵盤ハーモニカ」三年生は「ソプラノリコーダー」、中学一年生で「アルトリコーダー」を使い始める場合が多かった。クラブ活動で使う楽器の注文や、楽器の修理の依頼は年間を通じてあった。
 と、ここまでは前置き。
 
 先生方はどなたも、まず例外なく授業をしているから、数少ない空き時間以外には授業の合間にしか商談することができない。午前中には2時限のあと、午後は給食のあとか授業後しか会えない。だから、毎日、ヒマを持て余している。
 だから喫茶店は格好の暇つぶし場所となった。
 そこで、好ましい喫茶店の条件がある。

1】長居しても煙たがられない
2】駐車場が道路に面していない
3】雑誌類が豊富に置いてある
4】もちろん喫煙できる
 この条件をクリアする喫茶店で、おいしい珈琲を期待することは不可能だ。ところが、世間には同類がたくさんいらっしゃるらしい。この手の喫茶店は街に多い。今でもこんな店が多い。
 
 そんな営業の仕事を6年ほどしていたが、些細な事情でこの会社を辞めた。
 だからこの間は、ぼくはおいしい珈琲を飲んだ記憶がない。

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